動きと呼吸

操体法の本にはこう書いてあります。
仰向けになり両方の膝を曲げる。
その膝をゆっくり右と左に倒してみる。
そして倒しにくい方から、倒しやすい方へ息を吐きながらゆっくりと動いていく。
一番心地の良い所で動きを3~5秒ほどタメて、ストンと瞬間脱力をする。
・・・と。
操体法が出来た当時の基本的なやり方です。
今となっては、訂正すべき点が多々あるのですが、今回は呼吸についてだけ書いてみましょう。
「ゆっくり息を吐きながら動く」と本には書いてありますが、呼吸は動きに合わせて吸ったり吐いたりせず、自然呼吸で構わないのです。
※この辺は地方によって意見が別れるところでしょうが、私の考えをまずは聞いてください。


動きに呼吸を合わせる、または呼吸に動きを合わせるというのは武道や武術、あるいはヨガなどに代表されるボディワークなどでは当たり前に行われています。
動きそのもの、また体の中と外の動きを協調させるという意味でも呼吸は重要な役割を果たしています。
橋本先生(操体の創始者)もおそらくそんな所から動きに呼吸を合わせるとしたのだろうと推測されます。
運動療法として歩き出したばかりの当時のやり方であれば、それも必要だったかもしれません。
当時はまだ正体術の影響が多く残る時期で、動きが重要であり感覚については今ほど言われていなかったのだろうと思われます。
■ 動きと呼吸を合わせるということ。
体の中と外を一致させるというのであれば是非操体でもそうするべきではないのか?
橋本先生が言っていないことをするのは操体じゃない!
やっぱり息を吐きながら動く方が良いのではないか?
そんな声が聞こえてきます。(;^_^A
なぜ動きに呼吸を合わせる必要はないのか?
まず単純に動きと呼吸を合わせながら動くというのは難しいということがあります。
慣れている方、感の良い方であればそれ程違和感を感じないかもしれませんが、はじめて操体法に触れる方の多くは「動き」と「呼吸」というものを同時におこなうのは難しい事なのです。
えっと・・・痛い方の少し手前、この辺かな?
ここから息を吸って痛くない方へゆっくりと動くと・・・
どの辺が一番良い感じなのかな?・・・この辺?もう少し?
おっと息が続かない!・・・この辺でいいや、で3秒タメて・・・ストン!っと脱力・・・(〃´o`)=3 フゥー なんか忙しいなぁ・・・
これでもまだすんなり出来た方でしょう。
そしてコツが掴めない方は、難しい為に「わからない」とアセリ、余計なことを考えてどんどんパニックになってしまうのです。
■ 本当の理由
そして見落としてはいけない本当に大事な事が一つあります。
それは操体で大事なのは動く事ではなく、感覚を味わう事だということです。
体をコントロールすることではなく、体と上手に対話する事が操体なのです。
こうやって動くから痛みが取れる。
こうやって動いたらバランスが戻る。
それが操体ではないのです。(正確には操体の一部ではあります)
■操体は体に任せる世界
動きと呼吸を合わせるということは意識で体をコントロールしていくという世界です。
そう言ったものを否定しているのではありません。
それも素晴らしい文化です。
ただ、操体はあくまでも体と対話していく世界なのです。
体と対話すると言う事はどういうことか?
これは「他人と対話する」と置き換えるよくわかると思います。
自分の意見だけを言い、自分に従わせる事が対話でしょうか?
独り言を言う事が対話と言えるでしょうか?
相手の話を十分に聞いてあげてお互いを尊重していく事が対話だと私は思います。
操体に話を戻すと、意識で体を使うのではなく、体の声(感覚)を十分に聞き「そうか、そうしたかったのか」と気付いて一緒に感覚を味わう。
体に言う事を聞かせたり、指示していくのではなく、体に任せていく。
これが体との対話なのです。
動きに呼吸を合わせるという手間をかけて、余計難しい事をしなくても自然に呼吸をしていれば体は最適な呼吸を選択してくれます。
緊張すれば早くて浅い呼吸に、リラックスすればゆったりと深い呼吸にと
体はその時の精神状態や体に合わせて呼吸を自然に選択しているモノなのですから。
普段頭を使って生活をしている我々は脳みそ(頭)の方が優秀で体はお馬鹿さんと思っている傾向にありますが、実は全てを知っているのは脳みそ(頭)ではなくぴかぴかカラダなのです。
最後にまだ「本当に動きに呼吸を合わなくて良いの?」と心配されている方へ・・・
そんな心配はいりません。
何故ならもし間違っていたとしても、体は不快感として教えてくれるのですからd(^-^)



2 Responses to 動きと呼吸

  1. 甘酒 より:

    初コメです。
    >操体に話を戻すと、意識で体を使うのではなく、体の声(感覚)を十分に聞き「そうか、そうしたかったのか」と気付いて一緒に感覚を味わう。
    私も、とある武術を5年前に中国で習い、そこでそのような考えに触れ、私が現在行っている整体法に取り入れられないかと、四苦八苦しています。
    たいへん勉強になりました。
    ありがとうございます。(^ ^)/

  2. 砂金 より:

    >甘酒 さん
    コメントありがとうございます。
    武術も操体も自身の体や心と向き合い、対話していくというのは共通することですよね。(^_^)

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