タメ じゃなくて タワメ
「2~3秒ためますか?」に関連してもう一つ。
タメてタメてと言いますが、タメではなくタワメなのです。
仰向けになり両方の膝を曲げる。
その膝をゆっくり右と左に倒してみる。
そして倒しにくい方から、倒しやすい方へ息を吐きながらゆっくりと動いていく。
一番心地の良い所で動きを2~3秒ほどタメて、ストンと瞬間脱力をする。
これを3~5回繰り返す。
これを二人、ようするに施術者がいて行う場合は、動きを2~3秒タメてというところに施術者(操者)が「軽く抵抗を与え」という言葉が入ってきます。
抵抗を与えている・・・タメる・・・
操体法が運動療法として存在していた当時としてはこの表現で良かったのでしょう。
しかし、現在の操体から見るととても違和感を感じる表現です。
抵抗を与えてタメる。
いくら「軽く」という言葉が付いているとは言え、「抵抗」と言う言葉が表しているのは力のぶつかり合いです。
ご本人が動いていく力と、操者が抵抗を与える力がぶつかっている様子。
それは正に溜めであり止めでもあるのです。
動いてきた力を溜める、そして2~3秒後に瞬間脱力をする。
川の流れをせき止めて(タメて)一気に流す(瞬間脱力)。
運動療法としてはこれでも良いのでしょう。
現在のPNFストレッチなどは、このような感じで行われています。
では撓める(たわめる)とはどういった状態なのでしょう?
撓む(たわむ)とは竹などがしなっているような状態です。
先ほどと同じく川の流れで例えると、川をせき止めてしまうのではなく、流れてくる水と同じ力で逆の流れを与えていく感じです。
流れと流れがぶつかると、そこで水は盛り上がり、さらには上方へポワ~ンと膨らんでいく、撓むとはそんなイメージです。
「タメ」では力のぶつかり合いによる筋肉の抵抗しかありませんが、「たわむ」ことで身体の内部に流れが通り感覚を味わえるのです。
一般の方に操法の説明をするとき、撓めてといっても伝わり難いので「タメて」と言っても良いでしょう。
しかし、その場合であってもプロの操者であるならば、撓めてという意識を持ってタメてという表現を使わなければいけません。
「タメ」と「撓め」、似ている言葉でもその意味はずいぶん違うモノなのです。
意味を知らずに「タメ」という言葉を使うのか、意味を理解した上で伝わりやすいから敢えて「タメ」という言葉を使うのか、この違いは実に大きいのです。